最強トレーダー集団流 伝説のトレーダー育成法「タートルズ」の成功秘話と手法解説

投資テクニック

最強トレーダー集団流 伝説のトレーダー育成法「タートルズ」の成功秘話と手法解説

  1. はじめに:伝説のトレーダー育成プロジェクト「タートルズ」とは
  2. 1. リチャード・デニスとは?トレーダー育成にかけた情熱
    1. 1-1. 謙虚な青年から億万長者へ
    2. 1-2. 哲学的思考がもたらした実証主義
    3. 1-3. 資産運用会社「C&Dコモディティーズ」の設立
  3. 2. 「タートルズ」プロジェクトの始まりとその背景
    1. 2-1. 才能か訓練か?議論から始まった実験
    2. 2-2. 新聞広告募集から応募者1,000人超の熱狂
    3. 2-3. 「タートルズ」の名前の由来
    4. 2-4. たった2週間の集中トレーニング
  4. 3. タートルズのトレーディング手法とルール
    1. 3-1. トレンドフォロー戦略の核心
    2. 3-2. 基本的なブレイクアウト・システム
    3. 3-3. N(ATR)によるストップロス設定
    4. 3-4. 厳格なリスク管理ルール
    5. 3-5. ピラミッディング手法
    6. 3-6. P/Lフィルター
    7. 3-7. 自由度と規律のバランス
  5. 4. トレーディング環境とトレーダーの成長プロセス
    1. 4-1. シンプルなトレーディングルーム
    2. 4-2. 自律性と責任感の育成
    3. 4-3. 自己規律の重要性
    4. 4-4. 取引日誌の重要性
  6. 5. タートルズの投資成果とその後の展開
    1. 5-1. 驚異的なパフォーマンス
    2. 5-2. 1988年の突然の解散
    3. 5-3. 手法の持続的な有効性
    4. 5-4. デニスのその後
    5. 5-5. 第2世代タートルズ
  7. 6. タートルズ成功者と失敗者の分かれ目
    1. 6-1. 同じ訓練、異なる結果
    2. 6-2. ルールを守れるかどうか
    3. 6-3. 心理的な強さ
  8. 7. タートルズの教えから学ぶべきこと
    1. 7-1. 明確なルールと一貫した実行
    2. 7-2. すべてのシグナルを捉える重要性
    3. 7-3. 自己分析と記録の重要性
    4. 7-4. リスク管理の徹底
    5. 7-5. 精神面の強化とビジネスマインドセット
    6. 7-6. 早めの損切り、じっくりとした利食い
  9. まとめ:タートルズ・メソッドの普遍的価値
    1. タートルズから学ぶ重要な教訓
    2. 現代への応用
  10. 参考文献・関連書籍
    1. 関連

はじめに:伝説のトレーダー育成プロジェクト「タートルズ」とは

1980年代のアメリカ・シカゴ。400ドルの資金から数億ドルの資産を築いたトレーダー、リチャード・デニスが「優秀なトレーダーは養成できるか?」という議論から生まれた実験的プロジェクトが「タートルズ」です。

経験のない素人をわずか2週間のトレーニングでプロトレーダーに育て上げ、驚異的な利益を実現したことで伝説となりました。本記事では、リチャード・デニスの生い立ちからタートルズの誕生、トレーディング手法の詳細、そして解散後のメンバーたちのその後まで、トレーダー育成の真髄を解説します。


1. リチャード・デニスとは?トレーダー育成にかけた情熱

1-1. 謙虚な青年から億万長者へ

リチャード・デニス(1949年1月9日生まれ)は、イリノイ州シカゴのアイルランド系カトリック教徒の家庭に生まれました。裕福な家庭の出身ではなく、地味で内向的な少年でしたが、17歳の時にシカゴ・マーカンタイル取引所でオーダーランナー(使い走り)のアルバイトを始め、トレーディングの世界に足を踏み入れます。

当時、21歳未満は直接取引できなかったため、父親に代理取引を依頼しながら実践の場に身を置きました。デポール大学を卒業後、ニューオーリンズのチューレーン大学の大学院奨学生としての資格を得ますが中退。1974年、わずか25歳で億万長者となりました。

1-2. 哲学的思考がもたらした実証主義

大学では哲学を専攻し、18世紀の英国哲学者デイヴィッド・ヒュームやジョン・ロックなど経験主義の思想家に傾倒します。「人間の全ての知識は経験に由来する」という経験主義の考え方は、後の「タートルズ」実験におけるトレーダー育成の根底となりました。

1-3. 資産運用会社「C&Dコモディティーズ」の設立

1975年、トレーダー仲間のラリー・キャロルと共にC&Dコモディティーズという投資会社を設立。「ピットの貴公子(プリンス)」と呼ばれたデニスは、マーケットから莫大な収益を上げ続け、世界最大級の資産管理会社へと成長させました。

しかし、運用成績は激しく乱高下することが多く、1987年のブラックマンデーでは莫大な損失を被り、数年間取引を中断しています。


2. 「タートルズ」プロジェクトの始まりとその背景

2-1. 才能か訓練か?議論から始まった実験

デニスと高校時代からの友人であり、数理論理学の専門家でもあるウィリアム・エックハート(通称ビル・エックハート)は、優れたトレーダーが生まれつきの才能か後天的な訓練で決まるのかをめぐり意見が対立していました。

デニスは「適切な指導を受ければ誰にでもできる」と主張し、エックハートは「トレーディングの能力は天賦の才」と考えていました。この議論に決着をつけるため、1983年と1984年の2度にわたり、素人を集めてトレーダー育成の実験を始めました。

2-2. 新聞広告募集から応募者1,000人超の熱狂

C&Dコモディティーズは1.5万ドルの予算を割いて、『ウォール・ストリート・ジャーナル』、『バロンズ』、『インターナショナル・ヘラルド・トリビューン』に広告を掲載。経験不問のトレーダー募集をかけたところ、警備員、受付、バーテンダー、MBA保持者など多様な背景の応募者が1,000人以上殺到しました。

簡単な○×の筆記試験と面接試験を経て、最終的に約23人の「タートルズ」が採用されました(注:情報源により10名程度、20名以上、23名など表記に幅があります)。

2-3. 「タートルズ」の名前の由来

名前の由来は、デニスがシンガポールの養殖場を訪れた際、樽の中でひしめき合う亀を見て、「この亀のようなトレーダーを養殖してみたい」と考えたことから来ています。

2-4. たった2週間の集中トレーニング

リスク管理、注文方法、資金管理、具体的なトレーディング手法などを詰め込んだ2週間の研修を経て、トレーニングを受けた初心者トレーダーたちは、ルールに忠実に従い一定の成果を上げることができれば、一人ひとりに100万ドルの運用資金が配分されました。運用利益の15%を受け取れる条件で、教えられた投資手法は実験終了後5年間は絶対に口外禁止という守秘義務が課されました。


3. タートルズのトレーディング手法とルール

3-1. トレンドフォロー戦略の核心

デニスとエックハートが開発したトレンドフォロー手法は、価格のブレイクアウトを捉えてエントリーし、厳格なリスク管理を徹底する点が特徴です。この手法は1960年代前後に活躍した米国の商品先物トレーダー、リチャード・ダウド・ドンチアン(1905-1993)によって開発されたものが始まりとされています。

ニュースや経済指標に左右されず、チャートと数値だけに集中するため、感情に左右されない客観的判断が可能となりました。

3-2. 基本的なブレイクアウト・システム

タートルズの基本的なブレイクアウト・システムは以下のようなものです:

  1. エントリー:マーケットが過去20日間(20本の足)の最高値(最安値)を取ったら、新規に買う(新規に売る)
  2. 決済:マーケットが自分の建玉に逆行して過去10期間(10本の足)の最安値(最高値)を取ったら、その玉を仕切る
  3. ストップロス:新規に建玉をした後、もしマーケットが逆行して引かされたなら、資金の2%を厳格な仕切りポイントとして用いて損切りする
  4. 利食い:利益目標を置いてはいけない。利が乗った建玉を手仕舞う唯一の方法は、マーケットが逆行したときだけ

別の決済ルールとして、買いポジションは「10日間の安値」を下回ったタイミングで、売りポジションは「20日間の高値」を上回ったタイミングで決済する方法も活用されました。

3-3. N(ATR)によるストップロス設定

タートルズでは市場の平均的な変動幅を示す指標として「N」を使用しました。これは以下の3つのうち最も大きい値の20日間平均です:

  1. 当日の高値から安値までの値幅
  2. 前日の終値から当日の高値までの値幅
  3. 前日の終値から当日の安値までの値幅

(注:これは現在のATR(Average True Range)に相当します)

ストップロスポイントは通常N×2として設定され、無駄な損失を抑えました。

3-4. 厳格なリスク管理ルール

一回のトレードでリスクにさらす資金は最大2%に制限されました。これにより大きな損失を防ぎ、資産の長期的な成長を可能にしました。

ポジションのサイズは以下のように決定されました:

  • 運用資金が1億円の場合、1回の取引で取れるリスクは200万円まで
  • 例えば、Nが20ポイントで、ストップロスをN×2(40ポイント)とした場合、買える枚数を計算してポジションサイズを決定

3-5. ピラミッディング手法

「ピラミッディング」という買い乗せ手法も用いられました。買った後に値上がりしたら、さらに買い乗せするという手法で、タートルズではピラミッディング・ポイントをNとしており、N分値上がりしたら追加でポジションを持ち、ストップロスポイントも引き上げます。

ただし、1つの投資対象に対して、買い乗せによって許容される最大リスクを運用資金の10%程度としていました。

3-6. P/Lフィルター

タートルズの投資手法で有名なものにP/Lフィルターがあります。これは前回のトレードを利用するフィルターで、例えば大きなトレードで勝った後の取引を見送るというものです。統計上、大きなトレンドが連続して発生する確率は低く、ブレイクアウトにダマシが増える傾向があるためです。

また、大きな利益が出た後は精神的に強気になってしまい、誤った判断をしてしまいがちという心理面からもこのフィルターは役立ちました。

3-7. 自由度と規律のバランス

どの市場で、どの手法を使うかはトレーダーに自由に委ねられながらも、ポジションのクローズタイミングなど重要なルールは厳守されました。感情や裁量を排除し、システムに従うことを徹底することが、人間の感情や独断的な判断を排除し、明確なルールに基づいた完全なメカニカルアプローチでトレードを行うという目的の核心でした。


4. トレーディング環境とトレーダーの成長プロセス

4-1. シンプルなトレーディングルーム

オープンスペースに最低限の設備を配置したシンプルな環境。カジュアルな服装でストレスフリーな雰囲気が長時間の集中を可能にしました。卓球台も設置され、気分転換とコミュニケーションの場となりました。

4-2. 自律性と責任感の育成

訓練後はデニスやエックハートに常時指導されることなく、自分の判断で取引をする体制が取られました。週一回のミーティングで進捗確認と質疑応答を行い、日々の取引は遠隔監視でルール順守を促しました。

4-3. 自己規律の重要性

デニスは「いくら知識を持っていても自己規律のない人はそれを正しく実行できない」と述べています。選考では、トレーディング経験や金融知識はほとんど関係なく、主に知的能力と心理的な特性(特に自己規律)が重視されました。

4-4. 取引日誌の重要性

全ての取引は記録し、なぜその判断をしたのか理由を明確にすることで、自己分析と学習効果を高めました。これが成功トレーダーの共通点であり、トレードノートは現在も推奨されています。


5. タートルズの投資成果とその後の展開

5-1. 驚異的なパフォーマンス

ほとんどのメンバーが未経験であったにもかかわらず、次々と巨額の利益を上げ、業界に旋風を巻き起こしました。タートルズは相場が正しい訓練により成功できることを証明しました。

5-2. 1988年の突然の解散

タートルズの実験は1988年に突然終わりを迎えます。デニスが政治活動に打ち込むため、トレーダーを引退すると宣言したためです。背景には1987年のブラックマンデーが引き金となった運用成績の不振が関係していたとの見方もあります。

当時、デニスは「ジャンク・ボンドの帝王」マイケル・ミルケン率いるドレクセル・バーナム・ランバートのファンドを運用していましたが、運用成績の悪化により清算することになりました。

5-3. 手法の持続的な有効性

タートルズの解散後も、元メンバーの何人かは引き続きトレードで成功を収めました。手法の有効性は現代でも証明されており、トレンドフォロー戦略は今なお多くのトレーダーに支持されています。

5-4. デニスのその後

デニスは1994年に復帰を宣言し、弟とともにデニス・トレーディング・グループという運用会社を立ち上げました。その後に高い運用成績を叩き出しますが、2000年に再び成績が悪化し、運用資産の半分以上を失って再び引退しています。

5-5. 第2世代タートルズ

1990年代初めにも同様の実験が行われたといわれています。これは伝説の商品ヘッジファンド、コモディティーズ・コーポレーションの依頼により、デニスとエックハートが講師となって、コモディティーズの社員ら30名程度を対象に、4日間の講義日程で行われました。


6. タートルズ成功者と失敗者の分かれ目

6-1. 同じ訓練、異なる結果

同じトレーニングと手法を学んだにも関わらず、成功する者と失敗する者に分かれました。成功の鍵は技術以上に「トレーディングをビジネスとして理解し、実行する能力」と「精神的な強さ」にありました。

6-2. ルールを守れるかどうか

デニスは「これらのルールを公表しても、それに従う人はほとんどいないだろう」と主張していました。その理由は、ほとんどのトレーダーはルールを厳格に守らず、気分次第で取引する傾向があり、結局は定められたルールから逸脱し、優れたパフォーマンスを達成することなく市場から退場してしまうからです。

一部のトレーダーの中には、決められたルールに戸惑いを感じ、自ら勝手に変更してしまい、本来のルール通りに取引することを避ける傾向が見られました。

6-3. 心理的な強さ

トレードには失敗に耐えられる強い精神が必要です。タートルズのメンバーも、最初から上手くトレードができたわけではなく、過剰にリスクを取り過ぎて失敗したり、パニックになって底値で売ってしまうといった失態もありました。こうした経験を乗り越えられるかどうかが成否を分けました。


7. タートルズの教えから学ぶべきこと

7-1. 明確なルールと一貫した実行

成功の秘訣はシンプルだが厳格なルールを守り続けること。感情に流されず、ルール通りに行動することで安定した利益を追求できます。

7-2. すべてのシグナルを捉える重要性

トレーディングのシグナルを見逃すと、利益獲得の機会を失うことになり、さらにそれが重なると全体のパフォーマンスにも悪影響を及ぼします。そのため、タートルズ投資では、すべてのシグナルを確実に捉えて実行することが非常に重要とされています。

7-3. 自己分析と記録の重要性

トレードノートをつけ、取引の理由を明確にすることで、自分の判断力を磨き続けることができます。これは現在でも成功するトレーダーの共通点として挙げられています。

7-4. リスク管理の徹底

予想外の損失を防ぐために、常にストップロス(損切りの注文)を活用します。取引を行う前に、自身が許容できるリスクに応じたポジションサイズを決定し、すべての取引に逆指値注文を必ず設定します。

ボラティリティの高い市場では、値動きの幅が大きくなる傾向があるため、逆指値注文の設定幅も広く取るなど、市場の特性に応じた工夫も重要です。

7-5. 精神面の強化とビジネスマインドセット

トレードは単なる技術ではなく「ビジネス」です。成功にはリーダーシップや自己管理能力、挑戦心が欠かせません。リスクと正面から向き合い、そのリスクを抑えながら大きなリターンを上げ続けることが求められます。

7-6. 早めの損切り、じっくりとした利食い

「損切りは早く、利食いはじっくり」という原則が重要です。ポジションを早期に決済すると、その取引で利益を得るチャンスを逃しやすくなります。タートルズ投資では、取引の回数を増やすことをルールに組み込み、大きな利益を生んだ取引はわずかでしたが、損失の多くは小規模に抑えられました。


まとめ:タートルズ・メソッドの普遍的価値

リチャード・デニスが提唱したタートルズ・メソッドは、経験ゼロからでもトレーダーを育成できる革新的なシステムです。トレンドフォローとリスク管理を核にした手法は現代でも有効であり、成功のカギは技術に加え精神面の強化とビジネス感覚にあります。

タートルズから学ぶ重要な教訓

  1. ルールの重要性:エントリー、決済、ポジションサイズ、ストップロスについて明確に定義されたルールが不可欠
  2. 心のコントロール:自己規律を持ち、決められたルールに従い続ける精神力
  3. リスク管理:資金の2%ルールなど、厳格なリスク管理の徹底
  4. 継続的な学習:取引日誌をつけ、自己分析を行い続けること
  5. トレンドに従う:予測しようとするのではなく、変化に対応できるようになること

現代への応用

タートルズの手法は現在でも十分に参考になります。特にポジションの増やし方や資金管理は、現代の相場でも有効です。ただし、この手法が有名になったこともあり、単純にそのまま適用してもうまく機能しない面もあるため、基本原則を理解した上で、自分なりの工夫を加えることが重要です。

トレーディングの世界で長期的に勝ち続けたい方は、タートルズの教えを学び、ルールの徹底と自己成長に取り組むことが最も重要です。成功は技術だけでなく、強い意志と継続力によって掴めるのです。


参考文献・関連書籍

  • 『伝説のトレーダー集団 タートルズの全貌』(マイケル・W・コベル著、FPO)
  • 『タートル流投資の魔術』(カーティス・フェイス著)
  • 『タートルズの秘密-最後に勝つ長期トレンド・フォロー型売買』(ラッセル・サンズ著、パンローリング)
  • 『マーケットの魔術師』『続マーケットの魔術師』(ジャック・シュワッガー著)

免責事項:この記事は教育目的のために書かれたものであり、投資助言ではありません。トレーディングには大きなリスクが伴います。投資判断は自己責任で行ってください。

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